●天然の苗から人工栽培の苗へ
現在流通している板状の海苔は、養殖によって育てられています。海を畑として、海藻である海苔を育てるのは、手間暇が掛かる作業です。どのような手順で育てられているのでしょうか。
海苔はとても古くから食されており、縄文時代の人々も食べていたと推測されています。奈良時代(西暦700年頃)に編纂された「常陸風土記」にも海苔の記述が見られ、この時代には朝廷への献上品となっていました。昔々は天然の物を採取していましたが、江戸時代になると海苔の養殖技術が発達し、養殖業が盛んになります。しかし、海苔の養殖技術が飛躍的に高まったのは、1949年(昭和24年)に、イギリスの学者のキャサリン・メアリー・ドリュー博士が海苔の生態を解明してからです。
それまでは、夏の間に海苔がどのように育つのかが分からなかったため、苗の養殖技術が確立しておらず、天然の苗を採取して養殖していました。研究の結果、種から苗へと人工で栽培できるようになり、養殖の技術が飛躍的に高まったのです。
●海苔ができるまでのプロセス
海苔の種は、「殻胞子」と呼ばれる小さな胞子です。この胞子が育ってくると、「葉状体」と呼ばれる葉っぱになります。この葉状体が海苔です。これを摘み取って形を整え、板状の海苔へと加工して出荷されるのです。ただし、葉状体の海苔の全てを収獲するわけではありません。一部は、種とある殻胞子を採集するために残されます。
葉状体がさらに育つと、オスとメスの細胞が生まれます。オスの細胞から生まれた精子が海中を漂い、メスの卵細胞へとたどり着いて受精して、「果胞子」という胞子になります。その後、果胞子から芽が出ます。この芽は細い糸のような姿に成長するので、「糸状体」と名付けられています。
糸状体は牡蠣などの貝殻に穴をあけて内部にもぐりこみ、貝殻の中で成長します。そうして成長した糸状体が、「殻胞子」という海苔の種をつけるのです。海苔は、このようなサイクルで繁殖しています。
●海苔は四角く漉いて乾燥させて製品へ
海苔の養殖では、春になると海苔の苗である糸状体をカキの殻に植え付け、秋になって殻胞子という種をつけるまで、海の中で大切に育てます。
秋になると、実った種が貝殻から出てきて、網に付着します。これを素早く摘み取って、新鮮な状態で加工して出荷されるのです。葉状体となって網に付着した海苔は、摘み取った後に細かく刻みます。刻んだ海苔は、紙の製造と同じように薄く漉いて、形状を整えます。整形した海苔を乾燥させ、規程の大きさ・形に整えてから出荷されます。
海苔ができるまでには、いくつもの工程が必要です。そして、良質でおいしく育てるためには、良質な環境を維持しなければいけません。製品になるまでには手間暇の掛かる作業が続き、夜通し仕事をする日もあります。生産者の愛情と海の大自然に包まれて、初めておいしい海苔ができあがるのです。
